こんばんは。和泉せんりです。
春も後半ですね。春という季節は人気なので声高らかに言えませんが、私はこっそり良くない季節だと思っています。なんか気分が沈みやすいんですよね。
しかし寒いのにめっぽう弱い私にとって、暖かくなるのはとてもありがたい事です。皆様も近日は春の日差しをお楽しみでしょうか。
前回のブログ担当は山本さんでした。
役者にとって芝居をする事とは、仕事をする事とはどういう事なのかを書いてくださいました。役者経験有る無し関係なく、色んな方から反響を頂いたブログでございました。まだお読みでない方はぜひどうぞ。
さて、先日少し気になることがありました。
その日私はお芝居を見に行きました。帰り道にSNSを開いて、そのお芝居について検索すると、色んな方の感想や考察があったのですが、その中に一際気になる投稿がありました。
その投稿は「演劇を見るのは初めてなので感想を書くのは恐縮で…」という文章から始まっていました。
演者を経験している私からすると、えー!恐縮しないでー!そのまま思ったこと書いていいんだよー!!って思いましたが、感想を投稿するのを躊躇う気持ちも実はわかります。
何においても、自分で考えて感じて、それのよしあしを判断するというのは難しいですよね。
自分はつまんないなって思った作品を、周りの人がべた褒めしてたら、もしかして私どこか見落としてた?とか、私だけ面白さがわかってなかったのかな…ってなって、感想言うの躊躇しちゃいますよね。みんながみんな躊躇する人ばかりじゃないと思いますが、少なくとも私は躊躇してしまうと思います。
あとは製作者の意図と自分の感じたことが違ったらどうしようとかも気になってしまいます。違うこと書いたら失礼かな?よくわかんなかったから書けないな…とかで、結局自分の中に仕舞いこんでしまうこともあるかも。
近年、人間が一日に触れる情報の量は、一昔前の何倍とも何十倍とも言われています。世の中にありとあらゆる情報が溢れかえっている昨今、それを如何に上手く、素早く扱えるかが重要視されている気がします。それは仕事、生活をしていく上でもそうだし、エンタメを楽しむためにも必要らしいのです。
何となくYouTubeを開いて暇つぶしに動画を見る時、回ってきたのが知らないYouTubeチャンネルなら、一旦高評価の数とか再生回数とかコメント見ようってなりませんか。同じコンテンツの動画でも、他に理由がなければとりあえず流行ってる方を見る方が多いと思います。
でも、高評価とか閲覧数とかが多いことと、自分が本当に面白いと思うかどうかは別だと思いませんか?
もちろん評価が高い動画の方が色んな方が面白いと評価しているので、自分も面白いと感じる可能性は高いです。ですが、画面に映るその数字がどこまで本当かはわかりません。複数アカウント所持して沢山いいね押したり、わざと動画が面白く見えるようにコメントしたりする、いわゆるサクラがいるかもしれません。
そもそも情報の内容が正しくないことだってあります。インフルエンサーが素敵に紹介していた化粧品だからって自分にあうかどうかはわかりませんし、商品をよく見せるために誇張した表現や実際の用途と異なる方法で使用し、あたかも効果的なように見せかけている動画はいくらでもあります。それでも沢山いいねがついていたり、レビューの評価がよかったりすると、いいのかな〜って思っちゃいます。
結局は自分で見て、経験して、感じて、それが自分にとっていいかわるいかを判断するしかないんですけど、じゃあYouTubeの動画片っ端から全部見るんかって言うたら、そんな時間ないし労力もかけたくない〜ってなりますよね。真にいいものを探すより、みんながいいって言ってて自分もそこそこ満足できるものに落ち着くんです。だからこそ判断するという行為を自ら行うことが減ってしまいます。
それが減るとどうなるか。自分の意見に自信がなくなります。何かを決める時、判断基準が自分じゃない何かになります。あの有名人が勧めてたからいいものだろう、とか、大人気、売れ筋って書いてるから間違いない!とか。じゃあ売り手は商品を売るために開発頑張るんじゃなくて有名人にお金出して広告してもらうか〜ってなるし、サクラのアカウント沢山作ってSNSで無理やりバズらせるか〜ってなります。商品、作品自体のクオリティを磨くより、売るために如何にして広告を打つかで売上が変わるなら、いい商品、作品は生まれなくなります。人気で有名なタレントさん集めて作った原作(漫画だったり小説だったり)ガン無視の映画が面白いんですかーーーって話ですよ。話題にはなると思うしある程度の収益は見込めるかもですが、その作品が後の世に残る素敵なものになるとは思えません。作る側もわかっててやってんでしょ。ひどいよねぇ。
失敬、熱が入ったあまり話がそれてしまいました。
結局何が言いたいのかという事なのですが、もうめっちゃ最初の話に戻るのですが…
あなたが見て、聞いて、感じて、思って、考えて、判断して、受け取ったものは、めちゃめちゃ価値のあるものです。どういう経緯でそこに至ったかわからん何百、何千のいいねより、評論めいたこと宣う有名人より、あなたが持ったそのひとつのアイデアの方がずっとすごいんです。だから全部大事にしてください。情報というでかい波に押し流されるだけだと、世の中はどんどんつまらんくなります。
もちろん他の意見に耳貸さないのは違います。聞かないんじゃなくて、他の意見についても判断するというプロセスが必要なのです。
山本さんのブログにもあった、役者の価値が誤認されたりする原因のひとつはこれにあると思います。メディアというのは声がでかいです。「こう考えるのが当たり前だよね、常識だよね」みたいなこと平気で言ってきます。せっかく触れて、なにか思ってくれた、感じてくれたのに、でかい声のせいであなたの価値ある声が聞こえなくなるのはあまりにも悲しいことです。
私は役者として、作品を作る者として、あなたの声が聞きたいです。花色もめんで公演をした時は、どうかあなただけの判断を、価値を持って帰ってください。感想をくれ!!と言っているのではなく、もし感想を投稿しようという気持ちはあるけど自分じゃない声に邪魔されて躊躇してしまうとか、自分はこう思ったけどそういう意見は聞かないから違うのかも、みたいなことは、どうかお気になさらないでください。あなたが受け取ったことには価値があります。不躾ながら、どうか損失なさらぬようにと願います。
などと偉そうに書きましたが(読み返すと本当に偉そうですね、すみません)、これは私自身への約束でもあります。私自身面倒になるとすぐでかい声の波に流されたり、それを盾にとって自分の声が聞けなくなってしまいます。そうならないように、自分の受け取ったことに誇りを持って、さらに価値を創造していける、そんな役者でありたいと思います。
全ての考え、感じる葦たちへ、敬意を込めて
担当者:和泉せんり
和泉せんり △ Senri Izumi
大阪府出身 1999年7月6日生まれ 24歳
アイドルシンガー
幼い頃よりヒップホップを学び、高校時にはミュージカル、演劇、朗読、ラジオドラマなど、幅広い出演経験あり。
また、ラジオドラマ脚本や編集、演劇に使用する美術などを担当することもある。
京都を拠点に活動するアイドルグループのセンターを、グループ結成以来1年半務める。
現在は都市部でのソロ活動や、企画MCもこなす。
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