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執筆者の写真橙延実央

花色手記 2023.4-2024.1

あけましておめでとうございます。 

昨年は花色もめんにたくさんの応援を、本当にありがとうございました。 

本年は演劇ユニットとして大きな一歩を踏み出すことができるよう、メンバー一同昨年以上に精進して参りますので、何卒よろしくお願いいたします。 

 

本当は、この記事はもう少し先に出そうと思っていたものでした。 

ただ、年始からたくさんのことがあって、少し早めに出そうとお話ししてこの記事を投稿します。 

 

前回は都夏くんが、彼の考える映画の魅力からいろいろなことを語ってくれていて、私は映画に限らず近年のメディアにおいても同じことが言えるとずっと思っていたのでとても共感しました。まだまだ私たちはあらゆる「作品」というものから学ぶこと、考えることはたくさんあるのだと思います。 

 

ここからは、過去の私のありのままの文章であり、本題です。 

 

 

これを書いたのは、6月20日の17時51分。 

私の中ではずっと書こうと思っている話題がある。 

 

皆様の中には、人生で衝撃に感じた出来事はいくつあるでしょうか。 

 

私にはいくつもあって、そのほとんどが人には言えないことです。 

それは、きっとこれを読んでいる皆様もそうだと思います。 

 

口に出せば甘えるなと、被害者面をするなと言われてきたことばかりで、いくつかあるその出来事の全てはやっぱり誰にも言えません。 

この記事もきっと没になるだろうと思うけど、書くことが必要だとも思うから、最後までしっかりと書こうと思います。 

 

いくつもある、と言っても今回話すのは1つだけです。 

私のプロフィールにも書いてある、東日本大震災について。 

人によってはショッキングな内容かもしれません。読みたくない人はブラウザバックしてください。 

 

今、2023年を迎えて東日本大震災から12年が経ちました。 

12年前の私は9才。小学3年生から教室が別棟の2階になるということだけが楽しみで仕方がなかった小学2年生でした。実家は崖の上に立っていたものの、目の前は海で、漁船がいくつも泊まっているような景色を毎日のように見ていました。 

 

毎日海を見て生きていたのに、あの日の私は津波を見ていません。 

 

私の家は流されてもいないし、家族も親族も亡くなるということはなく、被害がとても少ないです。ただ、私の友達はそうではないし、地域の方々もそうではありません。もっと広く言えば市、県、他県では私みたいに被害が少なく済んだ人間ばかりではありません。家や職を無くし、たくさんの人が亡くなり、今も行方不明者はいる。震災を受けてPTSDを患った方もいて、今も苦しんでいる人がたくさんいる。 

 

私は、震災を知らないのだとこの12年生きてきてたくさん感じてきました。 

津波も見ていなければ、大人に守られてきた。歩いて線路を通ってトンネルをくぐって出た先には陸地に青くて大きな漁船が打ち上げられていて、焼け野原になっていた隣町がやけに鮮明に見えたのを覚えている。でも、避難所にほぼ閉じ込められていて人の死体は見ていないし、生きるために止むを得ずしなければならなかった事は全て大人がしてくれていました。 

今もずっとそう。 

私は今関西にいて、高校生まではあのまちにいたけれど、私は人々に、まちに何をできただろうか。実際、何もできていないし、私は被災者の人々を傷つけてきたと思います。 

 

震災直後、劇団四季さんのおかげで演劇に出会うことができました。 

ボランティアで来てくださったとある方々はそのまま移住をしてまで復興に携わってくれて、今もお世話になっています。 

震災の影響で小学校が統合して、そこで出会った子が私の今の親友です。 

 

私は今の自分があるのは、震災の影響がとても大きいからだと思っています。 

震災がなかったら、演劇に出会えていただろうか。 

親友とは出会えていただろうか。 

でも、この考えは多くの被災者の方を傷つけると思います。 

それは、震災があって良かった、みたいな意味に取られてしまうかもしれないからです。 

実際、私の言葉はたくさんの方々を傷つけました。 

私は、震災とどう向き合っていいのか、未だにわかりません。 

 

兵庫県に来て、いろいろな人が当時地元に来てくれていたことを知りました。 

ありがとうございますしか言えません。何もお返しできていない。 

 

震災がなかったら、お前は今の大学に行けていなかっただろう。 

 

よく、被害者面するなと言われるから、あまり書かない方がいいと思うのだけれど。 

大学入試の倍率が11倍だったこともあり、そんな言葉たちも受けてきましたが、事実かもしれない現実で、今まで気にしてこなかった自分が明確に見え始めました。 

 

地域を飛び出て、いろんな人に出会って、自分の知らない自分に出会う。 

きっと、これを読んでいる人の中でも同じような経験がある人は多いのではないでしょうか。 

多分もっと自分の知らない自分はいて、これからその自分が見える度にこうして考えていくのだろうと思います。 

 

震災があったから、演劇と出会えたと、私は言っていいのだろうかとずっと考えてきました。 

夢を見てごめんなさいと、楽しいと思ってごめんなさいと、毎日のように考えていた時期がありました。 

それでも役者を目指しているのは、私はそっち側にいなきゃいけないと思ったからです。 

私は勉強もできないし、運動もできないし、論理性のかけらもないし、コミュニケーションが苦手だし。 

日本や国民の皆様が大変な時に、あの時たくさんの方が支えてくれた時みたいに、どの分野で私が恩返しができるかと考えた時に、私には演劇しかありませんでした。 

 

コロナ禍で、非常時に芸術文化は必要なのかという話題で私の身近な人が炎上していました。 

あれは、全員が当事者だったからなのか、パンデミックであったからなのかはわかりませんが、意見は二極化していたと思います。 

でも、あの時演劇と出会って、絵本と出会って、アニメ文化に出会って、音楽に出会って、いろいろな食べ物に出会った。あの頃の私にとって、全部が日々の楽しみでした。友達とも学校とも分断されていたあの時、全国の皆様や地域の大人たちがくださった支援物資やイベントなどの機会がなかったら、あの時もその過程で育っていく自分も、どうなっていたかわかりません。 

家の目の前に打ち上げられた白と赤の船を見て、重油と何かが混ざったようなよくわからない匂いを嗅ぎながら、大人達が波が被ったお店から拾ってきてくれた菓子パンを食べていたあの時と、支援物資の箱の中に入っていた「銀河鉄道の夜」を読んでいたあの時やミュージカルをただ無心で夢中になって見ていた時は全く違います。 

私はあの時、芸術文化に救われた、何も知らない子供でした。 

 

知らないことと甘えは、きっと罪だと思います。 

だからこそ、ここに懺悔して、これからもう一度東日本大震災というものと向き合っていきたいと思います。 

 

 

こんなことを半年以上前の私は書いていました。 

元旦に石川県能登半島地震が起き、今の自分がいかに無力か痛感しています。 

私自身が元旦からたくさんの人に大きく助けられたのに、私は今日まで何もできていない。 

結局自己満足にしか過ぎないと思うのです。そう言われてもきっとそうなんです。 

私はもうあの時とは違う、ある程度のことを知る大人です。 

それでも、今も過酷な生活を送る人々がいる中で何かできないかと、必要とされていないながらも考えてしまう自分がいて、結局は自分のエゴで、自分は自分の過去と向き合えていないのかもしれないと、改めて実感しました。 

 

今よりも早く全部のことと向き合って、ずっと早く積み上げて、ずっとずっと早く皆様に今までのお返しができるような役者として大成します。 

わがままかもしれないけど、あと少し、待っていてください。 


 

担当者:橙延実央



2003年生まれ、宮城県出身。

2011年、東日本大地震被災直後に劇団四季「ユタと不思議な仲間たち」を観劇し感銘を受け、演劇に興味を持つ。高校時代に演劇を始め、2019年宮城県高校演劇コンクール東部地区にて大会最優秀賞、中央大会にて優秀賞三席、個人演技賞を受賞。また、「0から始める演劇プロジェクト」を立ち上げ、演劇経験者や未経験者を集めて作品制作を行う。

現在は、関西を中心に役者として活動中。

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