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執筆者の写真山本善之

5回目 「役者という仕事」

連日暑い日が続いておりますが、皆さん如何お過ごしでしょうか?

仕事なんかで一度外に出ると、駅につくまでで既にインナーを変えたくなる季節ですね。熱中症にはくれぐれもご注意下さい。 

前回は実央が色々四苦八苦して書いてましたね。まだ読まれていない方は是非、御一読下さい。



さて、今回は「役者という仕事」について書きたいと思います。

本当は「役者の仕事」にしようと思っていたのですが、少し加筆したいこともありこのタイトルにしました。


僕は来年1月を迎えると芸歴が25年になります。こう書くと、長くやっているなぁという気にもなりますが、僕の世界の諸先輩方は平気で60年、70年選手が沢山いますので、まだまだ若輩ものの気分でいます。しかしそうは言っても25年。やはり僕なりに考えることもあります。


「役者」ってどんな仕事ですか?と講師の仕事も多くやっているからか、最近良く聞かれます。僕はいつも「色を塗る仕事」だと答えます。ほとんどの人は驚きます。

「役者」の仕事を自己を表現するものだと思っている人間はまずここでつまづきます。そういう人は大抵、絵は描かないんですか?と聞き返しますが、僕の考えではそれは戯曲家の仕事です。たまに演出家だと言う人もいますが、それはそれで派閥みたいなものなので、どちらが正解かはないと思うので、今回は割愛しますが、兎に角役者の仕事では絶対ありません。

僕は役者の仕事の殆どは「塗り絵」と同じだと思っています。中々これがわかってもらえないのですが。

この時に勘違いしてもらいたくないのは、色選びは役者の仕事ではないということです。色選びは演出家の仕事です。ここを間違えてる役者は結構います。役者は基本的に指示された色を指示された通り塗るのが仕事です。

これだけ聞くとなんともつまらない気がしてくると思います。なんだかロボットの代用品のような気持ちがしてくると思います。しかし、役者、特に舞台役者は現代の技術のロボットでは絶対に務まりません。未来に出来るかもしれませんが、恐らくそれがメジャーなものになることは恐らくありません。未来のロボットのほうが見える感情の種類が多く演技がすごいっていうのは原付バイクがウサイン・ボルトより100メートル早いと言っているようなものだと思います。


少し話がそれましたが、では役者指示されるまで何もしないのか?といわれるとそんなことはありません。役者がしなくてはいけないことは、


①演出に提示する色の種類を増やすこと

②その色のクオリティを高めること

③それをいつでも提示できるようにすること


この3つにつきます。要はバリエーション、クオリティ、アベレージですね。

この3つができてはじめてスタートラインだし、この3つをずっと追求するのが役者の仕事です。そしてこの中から適した色を時にはミックスしながら演出家と相談しながら塗って絵を完成させていくのです。


役者という仕事は常にスピーカーに徹しながら、それでも自分の色で勝負しなければなりません。面白い仕事だなと思う反面、辛い仕事だなとも思います。花色もめんのメンバーは僕以外はほぼ駆け出したばかり、まだこういうことが分からなかったり、難しかったり、納得いかなかったり、たくさんあるし、悩んで、落ち込んで、嫌になっているとおもいます。

しかし辞めずに。積んだ芸は必ず己を支えます。そういう時に自分を支えてくれるのは日々の積み重ねだけです。どうか全員が本物の役者のスタートラインに立てることを願っています。


メンバーの他にもこのブログを読んでいる、役者を目指している人の参考になれば嬉しいです。

みんな頑張れ。


山本善之



 

担当者:山本善之



奈良県出身。1992年10月15日生まれ。

大蔵流能楽師狂言方 戯曲家 演出家 役者

6歳の頃四世茂山忠三郎倖一に師事、現在は五世茂山忠三郎良暢に師事。

二十歳で「千載」を披く。

舞台を中心に能狂言問わず様々な公演にて活動中。

主な出演作品は、狂言風オペラ「フィガロの結婚」(ケルビーノ/蘭丸役)演 藤田六朗兵衛、「繻子の靴」(国王役 他)演 渡邊守章 等

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